発行部数積算書について

研究成果公開促進費について見積もりを作成する際に発行部数の根拠を示すようにということで、「発行部数積算書」というものをいっしょに提出することになりました。


どのような考えがあって、このような資料を付けることになったのかはよくわかりません。本当は聞きに行くべきなのかもしれません。


日本語学会でお会いしたある出版社の人は、そのような書類をつくるのは負担が大きすぎるので、できるだけ、学振の出版助成金以外の方法で進めるように著者にお話ししたとおっしゃっていました。


「発行部数積算書」に、記入例というものはありまして、次のように書いてあります。


本刊行物の著者は、○○分野では著名な研究者であり、著者の過去に出版した書籍の販 売状況は以下のとおりである。


この記入例の文をご覧になってどう思われますでしょうか。


私は、ちょっと困ったなという気持ちです。それは、これまで本を出されたことのない新人というべき著者、若手の研究者の研究書を出したい、出す機会を作り出すのが、研究成果公開促進費の主旨じゃなかったのか、という気持ちです。


著名な著者で何冊も過去に出している方なら、助成金は必要がないとさえいると思います。著名な著者であっても、マイナーなジャンルの研究をしているから、出版助成金は必要であり、重要であるわけです。


また、この記入例には「部数が見込める」ということばが、たくさん出てくるのですが、きちんと正確に見込めるのであれば、助成金は必要がないとも言えます。不確定な要素があって、リスクがあるので助成金が必要となるものであると思います。これは、マーケティング不足と言うことではありません。ひつじ書房は、常に関連学会に行って本を展示して,売るだと、実地的なマーケティングをいつも行っています。しかし、日用品のようにはマーケット調査はできないものなのです。


というふうにちょっと困ったなというものなのですが、私は被害者的には考えないで、むしろ、これは学術振興会の担当に方々への説明のよいチャンスと考えて、きちんと丁寧に書くことにしています。また、下の追記に書きましたように、単に安価であることが適切であると主張する大学の事務の方もいますので、積算書を書く方が、それぞれの考えについて見ることができますので、安易に最も安価であることが推奨されるような現状は変えることができるのかもしれません。


なので、どんなにめんどくさくなっても、ひつじ書房は学術出版に公的な意味があると信じて、対応していきます。


●補足

一番安価なところとは書いていない。

一部の大学で、見積もりについて複数の出版社から見積もりをとって最も安価な出版社を選定するということを述べている機関があるが、それは間違いである。「公募要領(研究成果公開促進費)」にはそのようには書いていない。適切性を説明するのが面倒なので、安価であるというのが、もっとも安易な説明方法だからだと思われる。研究者に勝手にそのように伝えているということです。

ただ、大学の事務担当者も心配しすぎであり、選定はあくまで、著者が行うのである。説明をする責任は著者にあって、大学事務局にはないと考えてよいと思われる。


公募要領(研究成果公開促進費13p


9) 出版社等及び翻訳者・校閲者と、本補助金の目的・性格等について事前に十分協議を行った上で、応募書類を作成してください。また、出版社等の選定に際しては、事前に複数の出版社等から見積書を徴した上で選定してください。

なお、見積価格の適切性について、専門家による検証結果を参考にし、査定を行います。



ネットで検索したところ、東大理研筑波大学研究推進部研究企画課が最も安価なとところとなっている。間違いです。