LSA初出展記 その3 Electronic Publishing in Linguistics: Challen

LSA初出展記 その3 (アメリ言語学会出展記)

言語学における電子学術出版―危機と可能性

http://www.lsadc.org/

Linguistic Society of Americaa in Pittsuburgh

アメリ言語学会会長が、アメリカ心理学会よりもリンクされている数が少ないと書いていたので、リンクします。)




出展は最後の日になります。明日まであるのですが、飛行機の関係で最終日は出展しないことにしているからです。

8日は、これは聞きに行こうと思っているのがありました。学術電子出版に関するパネルがありました。

Electronic Publishing in Linguistics: Challenges and Opportunities

最初の写真はBrill Academic Publisher社のDominique de Rooさん。Brill社はJohn Benjaminsと並んで、今回の学会のスポンサーでもあります。となりの長髪の男性が、MITのKal von Fintel氏。LSAのeLanguageを取り仕切っている方のようで、Smantics and Pragmatics誌が様々な努力でOpen accessを成功させていると語っていました。少々、原理主義者のようです。著者からも読者からもお金を取っていないことを誇りにしていると語っていました。このことは後で議論になりました。

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●Smantics and Pragmatics誌の特徴
論文の査読を行い、品質を保証できるものにしている
著者の原稿は、retypeしている。組み直している。
著者の投稿料金も読者の購読料も無料
MITとUTから資金を提供してもらっている。OPEN ACCESSである。
LatexをベースにしたPDF
査読のスピードを上げている。そのせいか、論文は短いものが増えている

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LatexをベースにしたPDFというのは非常に現実的な選択だと思います。発音記号な多言語組版、樹形図などが入る言語学の体裁は、いわゆる電子書籍端末では表示できません。だから、ここでの議論はiPadkindleとは関係がないのです。

最後のとりは、de Gruyter Mouton社のUri Tadmorさん。予稿集の中の言葉に私はいたく感動しました。「(電子的などうかという問題は、一番重要な問題ではなく)最も重要な課題は、新世代の読者が創造的な論文が生み出されることを期待しながらも、情報に対してお金を払わないということを当たり前のことと思うことだ。」非常に同感です。


As digital media gradually assume a central role in the academic world, publishers are faced with new challenges. Editorial offices have to deal with new demands from authors (faster turnaround times, specialized material such as colored illustrations and sound files, large databases, and other contents that are difficult or even impossible to print). Intellectual property rights, in particular copyright for publications, face a challenge not only from thieves but also from some ideologically motivated intellectuals. Perhaps the biggest challenge in a new generation of consumers that has come to expect constantly innovative productions and is not accustomed to paying for information.



Given all this, the role of academic publishers needs to be re-evaluated. We believe that fighting against these developments would not only be futile but indeed counter-productive. Instead of complaining about that the situation, publishers must adapt to the new circumstances and make the best of them. Just as television did not wipe out movie theaters--and neither did video cassette nor DVDs---there is no reason why new technologies should usher in the demise of the academic publishing industry.


Open AccessのところでMITとUTが助成してなりたっているという話しがありましたが、直接的に利益を被る研究者や読者以外のところから、お金をとって、執筆者も読者もお金を払わないでいいというモデルは、結局のところ、MITに入学する学生や寄付をする人々への負担にしてしまうことであり、負担者をずらしただけではないのか、と私は思いましたし、そのことが議論もされましたが、当事者たちが負担しない仕組みでいいのか、ネットの普及の中で当事者であっても負担しないでいいという風潮はどうなのか、というところと私は感じました。

それゆえに「投げ銭システム」というようなかたちで読者も寄付者にする、という発想の方が健全だと思うのです。これは私の持論であるわけです。




出典風景をひつじ書房の正面で出店していたSILの方に取ってもらいました。SILは発音記号フォントでたいへんにお世話になっている会社です。


ポスター発表のポスター。日本ではほとんどしませんが、向こうはポスターに大学のロゴを入れるのですね。日本の学会で、早稲田大学の院生が、早稲田の校章をポスターに付けるようなものでしょうか。学生さんの優れたabstract賞というようがあるようですので、それとの関係で大学対抗で競い合うのでしょうか。


出展者の一覧。日本語学会よりも数が少ないですね。


片付けた後の様子。


最後は、アメリ言語学会会長の挨拶です。この後、懇親会ですが、今回はチカラ果てたので参加しませんでした。英語で話しをラフにするのはなかなかキツイです。会長の話の後半は、高等教育の中に「言語学教育」を盛り込むような運動をしよう、という話でした。アメリ言語学会は、なかなか切実な運動を提唱しているようです。