書籍流通に根本的な変化をもたらす可能性?

うーん。私がひねくれているのかも知れないが、事前情報があれば、返品は減るのか?非常に甘い。この時代にこういうことを言っているのは20年遅れているのではないだろうか。このコピーは、大丈夫か、出版学会。


ひつじ書房は、出版業界で一般的に言われている「委託」「新刊配本」というのは行っていない。書店さんに刊行物のお知らせをファックスで送って、全て、発注していただいたもののみを出荷している。出版業界でいうところの「返品条件付き」という条件で出荷している。そういう意味では、近刊情報集配信センターがやろうとしていることをすでに何年も前から実現しているのだ。いまさら、という気がする。


しかし、ひつじ書房は専門書であるから、できることであり、一般書や新書や小説などはそういうことは可能だろうか。無名の作家であるとか、あまり知られていないルポライターの本などの場合は困難であろう。事前注文ができるためにはいくつか前提があるのだ。


●著者が著名で、定評がある。
●あるジャンルにつて出版刊行ラインは一定の評価を得ている
●読者が固定的で、そのジャンルについて知識がある
●読者から書名で中身が予想でき、品質あるいは内容が一定以上であることが予想できる



つまり、市場・読者が、予想できるものということだ。しかし、新人や新しい書き手、これまでになかった知見を世の中に登場させるのが、(現実にはなかなかないにしろ)出版の理想であり、理念であるとすると、原理的に考えると矛盾することになり、返品リスクを回避することは難しいということになるだろう。



「書籍流通に根本的な変化をもたらす可能性」というのは言い過ぎではないだろうか。


クリエイティブな内容については、返品はある確率で残らざるをえないと思う。その矛盾は書籍というモノが持っている可能性でもある。


この試み自体はどんどんやるべきだろう。しかし、「情報がアーカイブされれば、人間は読み、正しい判断をする」という認識が背景にあると思うが、その認識は出版業界人としていかがなものだろう。







日本出版学会 出版流通研究部会のご案内

「出版流通はどのように変わるのか」
ー近刊情報集配信センター構想とその活用ー

 日本出版インフラセンター(JPO)では、このほど、まだ刊行されていない
出版物の情報を一元的に収集し、オンライン書店リアル書店などの配信する
「近刊情報集配信センター」構想を立ち上げました。
 この構想が実現し、近刊情報集配信センターの活用が始まれば、委託制度の
もとで“需要”を基づかない“見計らい送本”により、返品リスクを抱えてい
た「を秘めています。果たしてこの構
想、出版業界の救世主になれるのか? 出版流通の抱える諸問題を考える部会
を開催したいと思います。
 日本出版インフラセンター・近刊情報EDI標準化推進ワーキンググループ
座長の永井祥一さん(会員)にご報告をお願いしました。

日 時:2010年8月4日(水)6時30分〜8時45分
報 告:永井祥一さん(講談社 営業管理部)
場 所:八木書店本店・6F会議室
     千代田区神田小川町3-8、TEL:03-3291-2965
会 費:日本出版学会会員 無料
    会員外一般参加費 500円(ただし、学生は無料)

主 催:日本出版学会・出版流通研究部会
問合先:下村昭夫
    TEL:047-334-7094、携帯090-1613-1714
    e-mail:shimo@murapal.com

  *準備の都合上「メール」もしくは「電話」でお申込み
   いただければ幸いです。