未発のことばの草稿

未発のことばの草稿




ひつじ書房は20周年を迎えました。
20歳と言えば成人ということになります。ここまでよく続くことができました。これはみなさまのおかげです。ありがとうございます。
振り返ればこの20年間に、日本語学の状況も出版の状況も大学の研究環境、日本語教育の現場も大きく変化しました。ひつじ書房が出発した1990年代は、日本語学の研究が勃興した時で、勢いがあり、その風に乗って、出版社の立ち上げ時期を乗り切ることができました。90年代後半は、インターネットが勃興するとともに出版業の問題が表面化した時期でもあります。そんな中、ほんとうに全力で駆けてきました。
言語の学術書をきちんと出すという方向は間違っていませんでした。おかげさまで、社員も8名になりました。言語学が、文科系の学問の中では、理系とも関わりを持ち、新しい研究が生まれる活気を持っているジャンルであったでこそです。他のジャンルはもっと苦境であると思います。言語学というジャンルで起業したことは幸せだったと思います。
20周年を新たな機会として新しいことに取り組みます。ひつじ書房の出版のラインとしては言語学、外国語学に親近感のある言語研究の書籍を刊行してきました。日本語学は、もともとは、日本文学とパートナーでもありました。従来の国文学の出版社とは違った形で、文学研究の出版にも取り組みたいと思っています。
もうひとつ、日本語学を翻訳して世界に送り出したい。採算ベースに載せるのはむつかしいと予測されますので、商売的な方法に限られない方法を考えています。みなさまにご相談すると思いますので、どうぞよろしくお願いします。内閣参与になった劇作家の平田オリザ氏が取り組んでいる劇場の支援会員のようなものを作れないだろうかと考えています。
20年の財産を失わないようにし、活かしながら、それでも守りに入らず、文系の優れた出版社、学術のジャンルでの新しい局面を切り開くことのできる出版社でありたいと思います。今後ともご支援下さいますようお願い申し上げます。