なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか?
書協のHPには、再販制度の必要な理由として次のように書いている。
念のため言っておくと再販制度とは、出版社の決めた値段で小売店も販売するという仕組みです。
なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか?
出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。
(1) 個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、
(2) 種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、
(3) 新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。
書店での立ち読み 風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。
再販制度によって価格が安定しているからこそこう したことが可能になるのです。
しかし、これは特性であって、理由にはなっていないと思う。私は理由は、「流通過程による価値判断の断念」ということだと思う。
発行点数が、65000点あり、それらの適正な値段、適正な仕入れ部数を取次の窓口、書店の仕入れでは判断できないからだ。しかし、これはそれぞれが専門性が欠けているからではなく、判断ができないからである。したがって、出版社のつけた値段を実際に購入する読者が受け入れるか受け入れないかしかない、という仕組みが必要だからである。
流通過程で全ての商品の価値を判断することが求められたなら、つまり買い切りが求められたのなら、それは実際に無限の時間と無限の商品知識が必要となるが、それは不可能である。神しかできないことだ。
したがって、再販制度は、必須のものである。文化を守るためではなく、文化を流通させるために必要と言うことである。文化財の価値を誰もが判断できないからだ。これを通常の商品と同じ意味で買い切り制にしようというのは間違っている。見込み発注には買い切りはありえない。
ひつじ書房は、お客様の注文である客注については、返品を認めていないが、書店さんの見込み発注については、担当者の了解のもとで、返品を認めている。これは、価値が判断できる人が自分の責任で求めた場合と、非専門家が置いてみようと考えて発注した場合を区別しているのである。
私は文化を守るために再販制が必要といういい方は、少し違っていると思う。価値判断ができない商品について、流通させようとした場合に、取引価格は値付けする出版社が決めたもので流通させるしかないということである。流通上の価格判断のコストを限界まで下げるためのものである。結果として多様な商品が流通できるようになっている、ということであり、その結果ある部分、文化的な投機が行いやすくなっているということになる。
この考え方からするとベストセラー、ロングセラーについては、価値の判断が可能なので再販制は必要がないということも考えられる。