出版再生、むしろベストセラーに依存しない体質を

出版点数が増えることが、出版不況というようないい方がある。たとえば、次のような文章。

http://book.asahi.com/clip/TKY200802140224.html
出版再生、カギは? ヨーロッパの取り組み
asahi.com


出版業界に危機感が高まっている。書店は次々と姿を消し、草思社民事再生法適用を申請するなど、有力出版社の経営も盤石ではない。市場が縮小しているのに、当面の売り上げ確保のための新刊点数ばかりが増え、4割近い大量の返品が生まれ続ける。この構造を断ち切らないと、衰退の一途をたどるばかりだ。


しかしながら、新刊点数が増えていて一冊あたりの発行部数が減っていることと出版不況というものは直接的には関係がない。それならば、新刊点数を減らして、出版不況を乗り切るということができるのか、それを志向するということは、そもそもベストセラーがでるということを求めているのであって、それは売れる本がでることで売上げはあがるかもしれないが、それは出版不況を打破することなのか。

発行部数が減って新刊点数が増えることは、むしろ、現代的には当然のことではないだろうか。大きな物語がなくなって、人々の関心は小さくなった。共通する幻がなくなったのであれば、小さくなっていくことは自然の理だ。問題があるとしたら、部数を減らして、新刊点数を増やしたというやり方でビジネスを成り立たせていくことは、不十分だということではないだろうか。

部数が少ないことは、現代的であり時代にあっていることである。ベストセラーに依存しないで、出版という活動を成り立てせていくことこそ、21世紀の出版として本筋のことだろう。