出版社と取次、書店の取引を複雑化しよう。RFタグの可能性
出版学会主催の研究会に参加した。昭和図書の大竹さんの講演であった。昭和図書は、小学館を支える会社の一つであるが、そこが今度、RFタグを用いて、買い取りと委託の2つの条件を併存させたかたちでの配送を行うという。
これまでは、ひとつの商品についてひとつの掛け率しか使うことができなかった。(これはたぶん、正確ではなく取次が近代化、システム化する過程でそういう単一化に進んでしまったのだろう。)
ひとつの商品にひとつどころか、旧来の出版社には価格別卸値というのがあって、5000円以下と以上では卸率を変えているのにもかかわらず、新規の出版社に対しては一本正味(いかに高額であっても同じ掛け値になる)ということを押しつけてきた。たしかに簡素化については、そうしたいという気持ちはわからないでもない。
しかし、一本正味は、スケールメリットに依存しがちになり、数を多く、量でしか勝負できないという単純化をもたらしてしまった。出版学会の部会での元鈴木書店の営業部長さんの講演では、鈴木書店が、会計を簡素化するために一本正味を導入したが、結果として規模の大きいトーハンや日販と数字の競争になってしまい、鈴木書店の有利な点である専門取次であるコマワリがきくという機動性、専門性ではなく取引総額という規模がもっとも重要視されるようになってしまった。日販とトーハンとの取り引き条件競争の中で、鈴木書店は敗退していったとのこと。
これは、量に最適化してしまった仕組みではそうなってしまって当然ということになる。
専門出版社と専門取次と専門書店が生き残るためには、量ではない基準が必要と言うことだ。
出版社と取次、書店の取引を複雑化しても、それを人的パワーを使わないでも処理が可能なRFタグの可能性がここにある。複数の取引条件を併存させることで、量とは違った価値判断を作り出せるのではないだろうか。
専門出版社と専門取次と専門書店に最適化した適切な複雑な取引の方法を作りだろう。複雑化を推進することを提案していこう。