書籍流通を変えるか、取引条件を識別する「RFタグ」

朝日新聞によると「「返品自由」か「責任販売」か 小学館、書店に選択肢」にするという。その背景には、「RFタグ」を用いて、どちらを選択したのかを確認できるようにするという技術革新があったとのこと。

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200807160077.html



そこで小学館は「返品自由」か「責任販売」か、書店が選べるようにする。技術的な課題があったが、取引条件を識別する「RFタグ」を開発。本に付けることで選択が可能になった。

まず、11月に発売予定の『ホームメディカ 新版・家庭医学大事典』にこのタグを装着する。本体価格は6千円(税抜き)。書店が「責任販売」を選べば35%に当たる2100円が利益になる。通常の委託なら、返品はできるが利益は約2割の1200円程度だ。

「責任販売」を希望する書店は事前に申し込めば、注文した数が確実に配本されるという。出版社が返品過多を恐れ、中小書店に本を回さないことも業界の弊害だが、「責任販売」の広がりは、必要なところに必要な部数が届く取引につながる。今回、小学館の販売目標は責任で5万部、委託で3万部。将来は他の書籍に広げ、他の出版社にも呼びかけるという。

                       Asahi.com 2008年7月16日10時45分

本のかたちは、取引条件によってかえることができないため、「責任販売」で仕入れて、「返品自由」で返品してしまうことが可能で、区別できないとすると一つの方法を選択にすることができない。ところが、「RFタグ」であればその区別ができることになります。

これは「返品自由」か「責任販売」のことだけではなく、いろいろなことが可能になる可能性がある。

先日、出版学会の例会の際の元鈴木書店の営業部長の小泉さんの話しで、鈴木書店が一本正味(これについてはオフレコでなくてもよいでしょう?)をはじめたということでありましたが、それによって規模の大きな取次が優位になってしまうと言う墓穴を掘ってしまったということであったが、もし、複数の取引条件を併存することができるのであれば、もっと複雑な取引形態が可能になり、学術専門書出版社と専門取次店にとって、生き延びやすい取引形態を作ることも可能かも知れない。

そういう意味で、今回の「RFタグ」は非常に面白い。