クラッシュしない能力

仕事をする人に必要な「機能」


サーチエンジンシステムがクラッシュしてもクラッシュしない能力ということになろう。ちなみに、宮沢章夫の小説に『サーチエンジンシステムクラッシュ』というのがあって、傑作だと思う。


ここで言いたいことは、「検索出来ればいい」「知識は蓄えなくていい」といった物言いへの反論だ。大学に入った学生さんたちに気にしてもらいたい。就職の試験の時にはそういうことが問われるよ、という忠告だ。


モノゴトを知る際に、体系と歴史を最低限は知ること。どうして、どのように、どんなものこととの関わりの中でソレが生まれたのか、ということである。


単に何か一つのモノゴトを検索的に知っているというのでは、話しにならない。これとこれを見て、その中でこれが好きだと思う。それは比較して、こういう点がよいと思ったから、というふうに言うためには、ソレだけを見ていては説明ができないのだ。


もちろん、感性も重要だろう。とはいうものの、多くの人は凡人なので凡人のセンスで「私はこう思う」と自信たっぷりに言っても、それは単に多数意見であったりすることもある。美容院で、美容師さんに得意そうに語っているのはだいたいそういうものだ。これは美容院ではそれでいいのである。


別に一般的であることが悪いことではないので。だが、書籍を作る仕事をするには、やはり独自の視線が必要だし、あるいは独自の視線への共感が必要だから、そういうバックグラウンドが必要なのです。


と書いている文章が、読者を十分に意識しているとはいいがたい、一人勝手ないい方になっているだろう。


そういうバックグラウンドがあることが分かると知性的であること、その人なりの視点、視野、考え方を持っているということが、分かる。個別性というのは、自分なりの物の見方を証明できて分かることなのだから。


クラッシュしないというのは、ネットワークのサーバーがダウンしても、自分で考えられることだ。そのためには、自分の中に情報を蓄積しておき、それを使って考えることができるということが重要だ。その知識は、その人なりの体系を持っている必要があるだろう。