EPUBでは学術書の複雑な組版は未だ

学術書電子書籍化、というのはなかなか容易ではない、ということを申し上げてきた。

これは、学術書電子書籍化できないということをいいたいのではない。テキストが流れたり、文字の大きさを変化させたりするようなこと、すべてをすっぽりあきらめて、InDesign組版した上で、pdfでデータを作るということは比較的容易である。pdfを書き出す時に特殊のフォントの埋め込みまでするとデータが重くなってしまうけれども。フォントの埋め込みが必要なのは、本文の明朝体の書体を固定したいということではなくて、発音記号など、普通のパソコンにインストールされていない場合には、データに組み込んでいないと表示できないから。

電子書籍というからには、画面の状態によって、フローし(流れ)てほしいと思うわけです。pdfでいいのなら、ディバイスはpdfリーダーであれば、よいということになる。

もし、テキストを活かして電子書籍を作る場合、xmlを使うことは予想されることで、日本語組版がまだ不十分であるということは現時点では仕方がないことであり、対応を待つのであれば、数年はかかるだろうと様子を見ている。たぶん、現在のEPUBでは100パーセント対応できないだろう。

学術書はマイナーなので、売れない本だから、印刷コスト、紙のコストがかからなければ、電子書籍が適しているだろう、という人がネットには多いが、実際にDTPなどの組版ソフトを扱ったことのない方の想像だけの考えだろう。たとえば、半濁音を、表記する時、「ガ」の濁点は、半濁点にしないといけない。半濁音は○ですが、そういう文字がなければ、パーツを組み合わせないとならない。そういうのはDTPの初期は力業だったり、印刷するまえに印画紙に張り込んだりというアナログな手を使ったりして、何とか誤魔化していた。その時代のことを思うと、今過ぎ、簡単に直ぐに容易にできるはずはないというのが正直なところだろう。そういう苦労をしたことがないひとはなかなか分からないだろう。

私は電子学術書籍はあり得ると思っているが、そんなに簡単ではない、ということを重ね重ね申し上げたい。違うのですと。そのことを深沢さんが「航」に書かれたので引用しておく。


編集者とデザイナーのためのXML勉強会
2010年4月28日
posted by 深沢英次 (@pictex)

EPUBはあくまでも文章を読ませる書籍のためのフォーマットで、せいぜいがコミックや写真集くらいまでです。
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2010/04/28/xml_workshop_for_editors_and_designers/