学術出版の5つの段階

おはようございます。朝、通勤中に考えました。

(もとはtiwitterに140文字で分割して書いたものです。せっかくなので、ブログに載せておきます。)

学術出版には5つの段階があります。生産・研究。評価。享受。転移・交流。消費。生産・研究は、研究自体を生み出す、発表すること。評価はそれを受け止め、研究コミュニティの中で位置づけること。学術出版社が関わる中心。本を出すことは評価を促す。

享受は、その研究を研究コミュニティが研究として読まれるということ。転移・交流は、他のジャンルとの交流と他の研究コミュニティから受け入れられること。このあたりは、岩波書店講談社などの出番ですね。消費は、研究コミュニティ以外から、楽しまれるというレベル。もっと通俗的になります。

生産・研究は、学会誌、学術同人誌、学会発表が担っています。学術出版社が関わることもあります。

岩波書店は学術出版社と言われますが、基本的に「転移・交流、消費」です。発掘しません。零細な学術出版社が発見あるいはお願いされ、学会で知り合いになり、出版して、評価されるとヨソのジャンルに売り出してくれます。零細は評価が決まる前で印税をお支払いできないということがあります。違う役割なのです。われわれが、半商業出版です。助成金などが出版に必要な場合もあります。刊行点数の15パーセントくらいは何らかの出版助成金をいただいて刊行しています。

発掘型と発掘後普及型では出版に対する態度が違います。なので、岩波書店編集部が作った『本ができるまで』は、読むと分かりますが、発掘後普及型なんです。グーテンベルクは、苦しい人生を送ったわけですが、そういう視点がなくて、印刷機作ったらすぐにハッピーみたいな紹介です。冗談ではありませんと発掘型は思います。未だ評価されていないものを世に送り出す、いわば投機的な要素があり、常に危険を背後にかかえています。

発見型は落語で言うと前座から注目しておりますが、発掘後型は、真打ちになって、さらに評価されてから、名人になってから付き合うわけです。どっちが悪いとかではなくて、役割が違うのです。