ひつじ書房の言語教育の書籍を出す方針

『学びのための英語学習理論』を刊行させていただいた。これまでのこのような言語学習に関する本というのは、おおむね検定教科書会社が、関連分野の研究を出してきたといえるのではないだろうか。

英語の教科書を出している大修館書店が、英語教育の専門書を出すと言った具合だ。


この場合、専門書は教科書を執筆している中心人物の先生に対する恩義というバックボーンによって刊行されてきたと傾向があったのではないだろうか。また、教科書を使う先生たちもその監修者の研究書や単行本を読んで自分で勉強しようという傾向があった。


宮台真司氏の言う権威的談合主義ではないけれども、頂点にいらっしゃるキーな先生を押さえておくことが重要な営業の課題であったし、押さえていることで、その方の教え子なども多かったから販売も可能だった。トップダウン方式と呼んでも良いだろう。このトップは権威があり、尊重されていた。


ところが、東京書籍がボトムアップ方式を採ることによってその方式が機能しなくなったと言われている。実際に教えている人、地域のキーパーソンを教科書の監修者に入れるという方法をとって、実際の採用件数などの成果があがった結果、ボトムアップ方式がいわば勝利を収め、トップの権威を尊重することによって、教科書の採用も獲得するという旧帝大の講座のトップの先生方のことを仰ぎ見る方法は通用しなくなってしまった。

これは中央権威からの脱出(民主化といういい方もできるか?)という側面と権威的な学問との連携が取りにくくなるという両方の側面を持つ。結果として言語系の教科書を出していた出版社は、権威が尊敬される時代であれば売れたり、副次的な効果があった時代がさってしまうと大量に売れない研究書は出しにくくなるということが起きた。採算はあくまで教科書でとって、その利益を専門書に回すことで比較的安価に刊行することができたが、そういうことはなくなってしまった。

ひつじ書房は、教科書採用のような後ろ支えはなく、研究書を刊行している。研究書はそれだけで採算をとることになる。その場合、どうしてもこれまでのような、大手の教科書系の会社が刊行していたような値段では刊行できないということになる。高くなるから、買ってもらえないから、出さないという選択肢もあるが、学術書を刊行するのを主な仕事としているわれわれは、高価になってしまってもできるだけ、出したいと考えている。

しかしながら、読者の方の中には、そのような比較的安価な値段に慣れていたりということで研究書の値段をずいぶんと高価に感じてしまうことが少なくないように思う。せっかく、努力して良い内容と思って刊行しても「高い」と言われたりする。「なんでこんなに高いんですか」という正直な質問もある。部数が2000部の場合と1000部では倍違うし、500部であれば4倍違うと言うことになる。

大量に書籍がでるという時代ではない、という前提。研究書は500部〜800部である。その場合、7000円前後から上の値段になる。教科書の売上げを導入できない海外の学術出版の場合のことを考えれば、私たちはできるだけ安価を目指していることがわかると思うのだけれども。

『学びのための英語学習理論』は2000部刷っていて、7000円前後ではなくて2400円。研究書よりも広い読者を想定しています。

http://www.hituzi.co.jp/books/477.html