wikipedia 学術出版

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学術出版は、学術的研究を出版すること。

理系では学術雑誌にての発表が中心であり、書籍の比重は大きくない。一方。人文科学、社会科学など「文系」的な学問では、書籍の重要度は高い。人文学及び社会科学が持っている「他者との対話」を促進する機能を持つ。その意味では書籍の存在は、人文学及び社会科学の根幹に参与していると言えよう。以下参照。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1246351.htm 人文学及び社会科学の振興について(報告)−「対話」と「実証」を通じた文明基盤形成への道−]

一部の書籍を除き、一般書に比べれば、少ない部数で刊行されるために1冊の値段は高くなる傾向にある。これは、学術書のページの組体裁が複雑であったり、特殊な記号(たとえば、ギリシャ文字、英語、多言語であることがおおいこと、発音記号、論理記号など)を用いること、内容が難しい本文を読みやすく作るには高度な組版知識と技能が必要であること、印刷代は少ない場合に割り増し料金がつくし、製本代も割り増し料金がかかるため、コストも割高になる。たとえば、300部で1000部の製本代の200パーセント増しということになれば、1000部と300部は製本代は同じと言うことになる。このため、1000部と300部ではかかる経費がさほど変わらないと言うこともある。

それぞれの分野の編集者は、学会誌を読んだり、学会に参加して、発表を聞いたり、研究室を訪問して、研究を聞いたりという日頃の積み重ねに基づき、研究に対する理解を高めつとともに、新しい研究のトレンドにも関心を持ち、新しい研究を世に送り出す努力を行っている。全ての大学の研究者が、採算の合う出版部数を想定できるというわけではないことやそれなりの編集者の思惑と見識に合致しない場合、持ち込まれた企画を採用しないこともあり、その点ではゲートキーパー的な役割を持つ。ただ、編集者は専門家ではないので、その判断は個人的なものとなることもあり、客観性という点では完璧ではない。この完璧ではないという点も、出版が単純に受注して作る「印刷業」や「受注開発」の産業と違う、投機性を持つゆえんであり、それこそが出版の醍醐味と言えよう。また、研究者からは反感を持たれる点でもある。


電子書籍が議論されているが、書籍ビュワーがアップデートが頻繁であることなど安定しないため、10年単位で読まれる書籍としては現時点では出版は難しい。今年読めた学術書籍が来年読めないということは、許されないことである。ただし、プロモーション、立ち見用には使える可能性はある。また、動的な要素のある研究成果については、電子書籍の可能性はある。ただし、iPadKindleが電子ビュワーとして適しているかは、現時点では不明だろう。体裁の固定制や入手可能かどうか、バックアップなど、長期的に保証されるかどうかは責任を持たないからである。