新しい「日本語能力試験」に対応?『「大学生」になるための日本語』

新しい「日本語能力試験」に対応?『「大学生」になるための日本語』

九州大学箱崎キャンパスで開催されました日本語教育学会に参加してきました。

堤良一先生、長谷川哲子先生著『「大学生」になるための日本語1』刊行しました。日本語教育学会にお目見えしました。

文法とタスクの融合を目指し、豊富で分かりやすいイラスト、著者が書き下ろさない実際に世の中に書かれた本文を使い、日常的な話し方をする俳優さんに吹き込んでもらった自然な会話の音声 CD2枚。新しい試みが随所で行われています。

日本語教育学会の初日のシンポジウムは、国際交流基金による新しい日本語能力試験の解説でしたが、課題遂行型のコミュニケーション能力を測るものになるとのこと(「課題遂行のための言語コミュニケーション能力を測ります。」『新しい日本語能力試験ガイドブック 概要版』)ですが、文法(言語知識)とタスクを融合させることを目標として作成した本書は、現時点でもっとも新しい日本語能力試験に対応している教科書と言えるのではないでしょうか。聴解も、新しい日本語能力試験のモデルに標準を合わせ、ある部分追い越しているとさえもいえる内容になっていると思います。


日本語能力試験
http://www.jlpt.jp/j/about/new-jlpt.html

(1)課題遂行のための言語コミュニケーション能力を測ります
 日本語に関する知識とともに、実際に運用できる日本語能力を重視します。そのため、文字・語彙・文法といった言語知識と、その言語知識を利用してコミュニケーション上の課題を遂行する能力を測ります。

(『新しい日本語能力試験ガイドブック 概要版』改定のポイント)
http://www.jlpt.jp/j/about/pdf/guidebook2.pdf




追い越しているというのは、どういうことかといいますと、会話が重なる、フィラーが自然に入っている、アナウンサーのようなスムーズ過ぎる滑舌ではなく、自然であること、わざとらしさがないほとんど「自然」と言っていいくらいの音声ということです。試験問題では難しいことかもしれないですが、本来的に言語教育が目指す新しい流れと私は思います。


新しい試みというのは、決まったやり方があるわけではありません。無秩序、混沌の中、著者の先生方の挑戦に満ちた原稿を、デザイン的に整理してくださり、いろいろと工夫してレイアウトを提案してデザインしてくれたデザイナーの大崎さん、途中、頓挫しかけたところをクリエイティブなセンスで、あちこち突っ込んで仕事をいささか過剰にたいへんにしたという傾向はあるものの、かたちを作っていった板東は、とてもたいへんであったと思います。社運をかけたこの本を本のかたちにしてくれた2人に感謝します。内部的な関係者への謝意を表明するのは内輪ボメと顰蹙されるかもしれませんが、こころからの気持ちですので、ブログに表明させていただきます。

日本語学校で教えている方で、本書を見てみたい、使ってみたいと検討してくださいます方がいらっしゃいましたら、ひつじ書房板東まで問い合わせください。本書は、まだ、発展途上の教科書だと考えています。多くの方々のご意見、アドバイスを賜りますことを祈っております。