「他者」との「対話」

「人文学及び社会科学の振興について(報告)−「対話」と「実証」を通じた文明基盤形成への道−」の報告書の中で、人文学および社会科学の目的、存在理由として書かれていることが、「他者」との「対話」である。そのことを実感できるだろうか。これから、しばらく肝に銘じてみたい。自分として納得できるのか、もし、納得できるのなら、そこから、構築し直してみたい。



http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/attach/1246381.htm


第二章 人文学及び社会科学の学問的特性
第二節 方法
(1)対話的な方法
4. 「他者」との「対話」(「普遍性」の獲得)
 (前略)「他者」との「対話」という知的営為は、単に、学者個人の問題にとどまらず、古今東西の様々な歴史や文化が前提としている諸「価値」を学ぶことを通じて、自分自身はもとより、自分自身が帰属している社会集団が前提としている諸「価値」を相対化するとともに、他の社会集団が前提としている諸「価値」を抽出した上で、両者を比較考量するための高次の「(認識)枠組み」を構築し、これを用いて異なる社会集団の諸「価値」を練り直していくことを可能としてきたのである。
 このような「他者」との「対話」という対話的な方法は、ある「価値」を前提として、その「価値」に基づいて物事の真偽、優劣を判断していくのではなく、その「価値」自体が本当に正しいのかを他の「価値」との比較考量の過程で吟味し、判断していくという、知的判断、道徳的判断、美的判断を総合した判断であると言ってよい。そして、このような対話的な方法を踏まえると、人文学や社会科学は、「他者」との「対話」を通じた自他の「(認識)枠組み」の共有の契機を含むものであるとともに、そのような「対話」を通じた「(認識)枠組み」の共有により、「共通性」としての「普遍性」を獲得できる可能性をも含むものであることを意味している。また、このような「(認識)枠組み」の共有の結果、より普遍的な「(認識)枠組み」が形成され、諸集団において共有されうるような基本的「価値」を含んだ諸概念の体系として、異なる「歴史」や「文明」の通文化的基盤(例えば「教養」)となることも想定されるのである。
 なお、第三章において述べるとおり、このような意味で、対話的な方法を中心とした人文学は、諸学を基礎付けるとともに、「共通規範」としての「教養」の形成に資するという役割・機能を果たすことになるのである。