草思社の倒産における謎

草思社についてです。


齋藤孝『声に出して読みたい日本語』などのベストセラーを出し続けてきた草思社が、倒産したということ。どこかが助けて、再建ということの可能性はないわけではないのであるが、どうだろうか。草思社というブランドが、ジャンルやテーマではなくて、売れるものを刊行するというものであったので、ブランドとしてのバリューが持続性にはポイントが少ないと思うので、そうなると資本を投入することのメリットが多くないかもしれない。

出版業界的に言うと、一発狙い的な一般書ヒットでは、会社を持続的に経営するのが困難になっていることと、一発以外のものがそこそこ売れている必要があるということだと思う。一般書的な単行本は、書店に持続的においてもらうのも難しい。知識的なビジネスマンむけの教養書のあたりのラインは、新書におきかわってしまったから、新書を出せているところではないときつい。

新書になりにくい一般書となると「ルポ」的なものということになる。このあたり、ジャーナリスティックな関心のものは、週刊誌の電車の広告の見出しとしては興味を持たれるが、ネットでちょっと見てみてすませてしまい、お金を払って買おうという人は多くないだろう。

一般書的なモノはいよいよ困難になっていると思う。週刊誌を持っていて、そこでの記事を本にするような流れを持っているところで、自社の週刊誌で広告を出せるようなところでないと単行本を出すのは困難になるだろう。

とすると大手出版社の企画会議を通らないものは本にならないことになり、事実を書籍で知らせたいと思う場合は、むしろ自費出版するしかないことになるかもしれない。となると新風舎の倒産は、ざまあみろではすまないだろう。

とはいえ、単に出版が構造不況だからというのではなく、経営者の責任はきちんと見ておく必要がある。


帝国データバンクによると


しかし近年は、大きなヒット作に恵まれず、過去のベストセラー作品を普及版
として低価格でシリーズ化することなどに取り組んだが、2006年同期の年
売上高は約16億2000万円にダウン。広告宣伝費の大幅な削減や本社不動
産の売却(2007年10月)などの合理化を進めてきたが、業界低迷、有利
子負債負担もあり、ここにきて自力再建を断念した。

となっていますが、年商を上回る負債というものが可能なのでしょうか。普通に経営している場合は、年商の3分の一が借入限度と言われます。銀行もそれ以上は貸してくれません。個人的な担保などを出していれば別でしょうが。

本社ビルを建てるための借金も、それは本社ビルを売却することで返却できる程度の借金の筈で、サギまがいで過剰にお金を借りて、何かおかしなことに使っていれば別ですが。

出版が不況なだけで、倒産したわけではないのではないかと私は思っています。